映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

2020-01-01から1年間の記事一覧

「眠る虫」感想

眠る虫、みた。謎の鼻歌に誘われたままバスに乗り込んだ佳那子は知らない街に迷い込み…。すべてが完ぺきとは行かないが面白い映画だった。生と死、終わりと始まりの境界の解体。過去・現在・未来が並行して存在する概念はA・ウィーラセタクン「ブンミおじさ…

「エマ、愛の罠」感想

エマ、愛の罠、みた。破綻した夫婦生活を送るダンサーが愛に奔放に生きる様を描く。G・ノエ「CLIMAX」のようなダンスは見応えあり。ただ宣伝で言うほど不道徳に感じず、むしろ彼女なりの支配への抵抗と愛の表現なのだと思った。行動の理由は分かりきっている…

「フェアウェル」感想

フェアウェル、みた。NY在住のビリーは中国に住む祖母が余命宣告を受けたと知り…。是枝裕和や山田洋次の名を挙げる人が多いのも納得。同じアジアながら日本とは異なる中国の家族観も興味深い。これが最後だと相手に隠して告げるお別れって、どんなものなのだ…

「マーティン・エデン」感想

マーティン・エデン、みた。貧しく無学な青年が上流階級のエレナと邂逅し文学に目覚めていくが…。ザラついたフィルムの質感、時折挿入される時代不明の回想、ポップな音楽。ディテールと抽象を行き来する不思議な映像に引き込まれる。夢を叶えても幸せになれ…

「ミッドナイトスワン」感想

ミッドナイトスワン、みた。新宿2丁目で踊り子・凪沙のもとに、育児放棄された親戚の子・一果がやって来て…。ふたりがバレエを通して心通わせて行く前半部分まではことしベスト。テーマ曲「Midnight Swan」のピアノ旋律の切なさ、転調後の力強さは最高。音楽…

「エノーラ・ホームズの事件簿」感想

エノーラ・ホームズの事件簿、面白かった!最高の夏休み映画。ミリー・ボビー・ブラウンが可愛い!これに尽きる。悪戯っぽく観客に語りかけ、大人の欺瞞に怒り、侯爵にほんのりと恋心を抱く。19世紀が舞台だが、花嫁学校がディストピアのように見えてきて面…

「半沢直樹(シーズン2)」感想

半沢直樹、面白かった。ホントに1クールのドラマかってぐらい詰め込んでるし濃い。もはやスパイラル編の記憶が薄れかけている。柄本明の妖怪じみたオーラが凄まじかったし、最後の大和田常務=香川照之の半沢への期待、尊敬、寂しさ、憎たらしさなど複雑な感…

「ヴィタリナ」感想

ヴィタリナ、みた。出稼ぎに行ったまま死んだ夫の部屋で暮らし始めたヴィタリナの物語。カラヴァッジオの絵画のように激烈なコントラストで魅せる。光の中に影があるというより、暗闇の中に陽が差しているかのようだ。一つひとつの絵が強すぎて物語にまで意…

「メイキング・オブ・モータウン」感想

メイキング・オブ・モータウン、大傑作!デトロイトの小さな一軒家から始まったレーベルがやがて世界の音楽シーンを塗り替えていく。数々の名曲を貴重な記録映像と共に鑑賞できるだけで大いに満足なのだが、スプリームスやジャクソン5に熱狂した当時の黒人の…

「ブリング・ミー・ホーム 尋ね人」感想

ブリング・ミー・ホーム 尋ね人、みた。鄙びた漁村、抑圧される女性と子ども、相互監視のムラ社会…どこまでも自分勝手な大人たちの無様な姿に胸糞悪くなる映画だ。チョン・ジュリ「私の少女」やパク・ジョンボム「波高」を連想させる手触り。なかなかにどぎ…

「白夜」感想

白夜、みた。ロベール・ブレッソン版。撮る人が変わるだけでこんなにも変わるのか。ルキノ・ヴィスコンティ版より好き。静謐でどこか無機質な世界。ポン・ヌフの雑踏、セーヌ河を通る船から響く太鼓のリズム、テーブルの下で絡み合う男女の手の官能、繰り返…

「TENET テネット」感想

TENET テネット、面白かった。入り組んだストーリーは1回目ですべて理解させる気ゼロ!追いつくのに必死だったが、見たことない世界にテンション上がりっぱなし。でかいスクリーンとズンズン響く重低音だけで満足。原因と結果の反転、時間の逆行。かえって…

「リアリティのダンス」感想

リアリティのダンス、みた。崖から飛び降りようとする幼少期の自分にホドロフスキーは語りかける。「苦しみに感謝しなさい そのおかげで いつか私になる」。生にしがみつくことを強烈に肯定するこの映画を、好きにならないはずがない。地獄巡りを経て独裁者…

「映画クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」感想

映画クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者、みた。ラクガキの世界が消えていく。その余白のなさはニッポンの息苦しさを反映しているようだ。しんちゃんがクレヨンひとつで世界を切り開く怒涛のクライマックスに泣いてしまった。さあ、…

「喜劇 愛妻物語」感想

喜劇 愛妻物語、みた。甘ったれな売れない脚本家と、そんな夫にイラつき罵声浴びせまくりの妻。なにかと妻の機嫌を取ってセックスに持ち込もうとするキモさよ!呆れてキレて涙して…つねに大騒ぎの妻だが、間抜けに口を開けて寝るの顔は穏やかだ。つかの間の…

「妖怪人間ベラ」感想

妖怪人間ベラ、みた。「妖怪人間ベム」の幻の最終回を追う新田はやがて狂気に蝕まれ…。いまこの題材でやる必然性を全く感じないが面白かった!最近のホラーではいちばん怖い。二つの物語が交錯する中盤までは最高だったが、そのあと少し失速。森崎ウィンと桜…

「行き止まりの世界に生まれて」感想

行き止まりの世界に生まれて、みた。ラストベルトで生まれ育った3人の若者を追うドキュメンタリー。想像以上にパーソナルでホームビデオのような手触りの映画。俺自身は監督のように友だち目線までは同化できず…。アメリカの現実をスケッチした映画と評され…

「マイ・バッハ 不屈のピアニスト」感想

マイ・バッハ 不屈のピアニスト、傑作!二十世紀最高のバッハ演奏家と称されながら不慮の事故で指が動かせなくなったピアニストの半生を描く。パッションに突き動かされ、数々の不運を乗り越えるジョアンは本当に不屈!右手が使えなければ左手で弾けばいい。…

「シチリアーノ 裏切りの美学」感想

シチリアーノ 裏切りの美学、みた。抗争激化するコーザ・ノストラを告発し、裏切り者になった男の20年。主人公のブシェッタ初め本当にみんな顔が濃い!ゆえに(?)シンプルな絵作りながら迫力ある映像。ロマンを排除したマフィアの醜く血生臭い2時間半にど…

「鴛鴦歌合戦」感想

鴛鴦歌合戦、面白かった。1939年製作のゴキゲンなオペレッタ(ミュージカルとの違いはナゾ)。屋外パートの空が広い!と思ったら撮影・宮川一夫で納得。志村喬の骨董品好きダメ親父のインパクトがやはりでかい笑 さすがに1万両の茶器割らなくてもよくない?…

「オール・ザ・キングスメン」感想

オール・ザ・キングスメン、みた。反汚職を訴える田舎の泡沫候補が州知事の座に就き、やがて権力に染まっていく…。いくら潰しても復活する腐敗政治、力強い言葉に載せられる民衆。ブロデリック・クロフォード演じるスタークの豹変っぷりが凄まじい。いろいろ…

「宇宙でいちばんあかるい屋根」感想

宇宙でいちばんあかるい屋根、みた。14歳の少女と星ばあのファンタジー。こういうジュブナイルな味わいの邦画はひさびさかもしれない!レイトショーで見て正解だった。夜空が輝いて見える映画。楽譜通りに完ぺきな音色を奏でる清原果耶とジャジーでブルース…

「サラブレッド」感想

サラブレッド、みた。感想思いつかず、3日ぐらい寝かせてみたがダメだった。普通すぎる。タイトル通り血統と階級をめぐる寓話といったところ。友情の証か、それとも自棄か。狭いところで世界は回っている。アニャ・テイラー・ジョイのセレブ感と、オリヴィア…

「Reframe THEATER EXPERIENCE with you」感想

Reframe THEATER EXPERIENCE with you、みた。Perfumeのコンセプトライブ「Reframe 2019」の劇場公開版。特にファンでもないけど、彼女たちのパフォーマンスが気になったので鑑賞。さすがに踊りのキレやステージの使い方はすばらしい。ただ映像作品としての…

「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」感想

僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46、みた。平手友梨奈の体現するコンセプトに向かって個を捨てでも舞台に立つメンバー、不気味なまでに存在を感じさせない大人たち。欅共和国2019は平手友梨奈を祭り上げる儀式のように映る。嘘を信じ、真実を疑いなが…

「MIU404」全話感想

MIU404、全話みた。現在進行形で事件を追うスリル。キャラの味付けがコッテリし過ぎで好みじゃないけど、外国人労働者、ネットの炎上文化、フェイクニュース、東京五輪…等々、〈いま〉をタイムリーに描けるTVドラマの底力を知った。久住=菅田将暉のジョーカ…

「青くて痛くて脆い」感想

青くて痛くて脆い、みた。田端のこと突き放して見たかったし、ドン引きした!って言いたかったけど、残念ながらあの気持ち分かってしまいました。彼のいじましさ、俺にもある。SNSと冷笑は現代日本の青春映画と切っても切り離せないテーマになりつつある。し…

「次の朝は他人」感想

次の朝は他人、みた。淡々とした会話劇に船漕いでたら、気づいた時にはあれ?またこの人たち同じことやってる?と大混乱。何度もループする飲み会、天気やその時のテンションで未来が分岐する。人と人が結ばれるってそんなものなのかなと怖くなる。終始感じ…

「田園に死す」感想

田園に死す、みた。過去の記憶のコンピレーション。白く厚塗りした化粧は、素顔のままでは嘘をつけないという素直さの現れか?おどろおどろしい恐山の景色、川を流れる雛人形、仏壇の前での性行。悪夢的なビジュアルの力は「書を捨てよ町へ出よう」を越えな…

「山椒大夫」感想

山椒大夫、みた。没落した役人の子・厨子王と安寿は奴婢の身に堕ち…。オールタイムベストの一本になるかも。仏法説話的な世界観をベースに描かれる世の普遍的な不条理。玉木が連れ去られる海辺、水平線の先に死後の世界が見える。残酷な運命と呪いに翻弄され…