映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

2020-01-01から1年間の記事一覧

「罪の声」感想

罪の声、みた。丁寧に証拠を積み上げ真相に近づく序盤は素晴らしく、星野源と小栗旬が交わるところまでは傑作の予感だったけど、以降、どんどん失速していく…。大きな力に押し流されてしまいそうな「声」への態度は、これまで野木亜紀子が描いてきた物語とも…

「とんかつDJアゲ太郎」感想

とんかつDJアゲ太郎、みた。これは優秀な「渋谷映画」ですね。道玄坂から円山町まで見覚えのある景色の数々。下北沢や吉祥寺など井の頭線沿線舞台の作品は多くあれど、あのエリアを下町っぽく描くの初めてみた。オフビートな前半は山下敦弘、DJに目覚める以…

「朝が来る」感想

朝が来る、みた。不妊治療の末に男の子を養子に迎えた夫婦と、中学生で子どもを産み手放さざるを得なかった母の話。永作博美、井浦新、蒔田彩珠の繊細かつどっしりと重みのある演技は素晴らしいけど、それだけで物語は駆動できないだろう。申し訳程度のミス…

「ウルフウォーカー」感想

ウルフウォーカー、みた。人間とオオカミの対立のあいだで揺れるふたりの少女の物語。「ブレンダンとケルズの秘密」「ソング・オブ・ザ・シー」からさらに進化した映像美。光の演出や画面分割など新しい要素多数。お話は「もののけ姫」を超えないが、映画館…

「パピチャ 未来へのランウェイ」感想

パピチャ 未来へのランウェイ、みた。イスラム原理主義が台頭する90年代アルジェリアを舞台に、ファッションで抑圧に争う女性を描く。彼女たちの闘いとは、無闇な孤立でも、他者への攻撃でもなく、仲間をつくり団結することだ。「無知な人々が宗教を盾に暴走…

「空に住む」感想

空に住む、みた。両親を失い、親戚のタワマンに住む小早川は、人気俳優の時戸が住人であると知るが…。岩田剛典がエロい!「オムライス作れる?」でエレベーターで出会った女性の家まで上がり込む一連の流れに説得力を持たせられるのは彼しかいないだろう。天…

「透明人間」感想

透明人間、みた。1954年公開東宝版。1933年ジェイムズ・ホエール監督版は悲しきモンスター扱いだったのに対し、こちらは旧日本軍の人体実験の生き残り&ピエロに仮装してヒーロー的立ち回りを見せる。化粧を落として透明になったり、粉の上に足跡できたり、…

「薬の神じゃない!」感想

薬の神じゃない!、みた。高額な白血病治療薬に苦しむ患者を救うため、ジェネリック薬の密輸に手を染める薬屋の物語。眠気がすごくて拾いきれてない箇所多数だが…面白かった。笑って、泣けて、考えさせられる。ハリウッド映画の供給が滞る中、ウェルメイドな…

「彼女は夢で踊る」感想

彼女は夢で踊る、よかった。閉館間際のストリップ劇場。支配人の木下は迫るラストステージを前に、とある踊り子との思い出を回想する…。分厚い鉄の扉の先に広がる幻想の世界、じりじりと命を燃やしながら舞うストリッパーの美しさよ。場所の記憶をめぐる映画…

「フィン」感想

フィン、みた。誕生日の美郎のもとに訪れた高校の同級生を名乗る女の子。誰だかわからないまま彼女を誕生日会に呼ぶが…。ゆったりと時が流れながらも、振り返ったとき特別な優しさを持って蘇りそうな一日。人生にポエジーがない?一日一日が物語であり、それ…

「タヌキ計画」感想

タヌキ計画、みた。ベトナム出身のタンヤは日本人に化ける薬TANUKIを使って日常生活に溶け込むが…。アイデンティティを捨てないと生きられない世界、それでいてほのかに漂う白人コンプレックス。あまりに閉鎖的な日本社会を皮肉った作品。もう一捻りあっても…

「未亡人」感想

未亡人、みた。芸術のため童貞を貫いてきた美大生。しかし、そんな彼を「面白い」と受け止める周囲の人間にも変化が生じていて…。十字架担いでチンピラにバイト代スラれるヴィア・ドロローサ。恋人できた友人をユダと罵る彼の生態=イエスの道程は楽しいが、…

「MOTHERS」感想

MOTHERS、みた。生みの母、育ての母、いまの母。心身共に不安定な元ヤクザの父のもとで暮らす監督が、姉と共に三人の母と向き合い、家族の呪縛を清算するドキュメンタリー。超絶大傑作!短気で攻撃的ながら優しさも見せる父が憎めない。ファミリーヒストリー…

「頭痛が痛い」感想

頭痛が痛い、みた。優等生と不登校。「死にたい」を抱えるふたりの少女が、ひょんなことから心を通わせ、やがて逃避行を計画するが…。禍々しく映される建設途中の新国立競技場と足を絡ませ合うラブホテルのベッドの温度差!共感と断絶を行き来するこの質感は…

「もとめたせい」感想

もとめたせい、みた。ある日突然同級生の男子に「ブラジャーを着けてみたい」と打ち明けられた相川は…。フェティッシュな秘密を共有する中で芽生える気持ち、一方、男子の無邪気な願望は期せずして相川に社会の抑圧を気付かせることになる。無残に切り刻まれ…

「へんしんっ!」感想

へんしんっ!みた。PFF2020グランプリ。自らも電動車いすを使う石田監督が障がい者の表現の可能性を探るドキュメンタリー。健常者と障がい者の壁、そして障がい者どうしの壁。振付師の砂連尾理に導かれながら、表現を通じ自らの身体性を受け入れていく。ラス…

「みをつくし料理帖」感想

みをつくし料理帖、みた。大洪水で生き別れた幼なじみの二人。数年後、澪は江戸で評判の料理人に、一方の野江は吉原の花魁として頂点を極めていたが…。奈緒の儚げな美しさ!彼女は命削って輝いてるんだ。面白かったけど近くて遠い吉原の幼なじみの話なら「居…

「望み」感想

望み、面白かった。行方不明の息子にリンチ殺人の嫌疑が掛けられた家族。息子は加害者か、被害者か。絶対に犯人ではないと信じる父と、加害者でいいから生きていててほしいと願う母。こういうサスペンスを定期的に見たい。野木亜紀子が一話完結ドラマで書い…

「シカゴ7裁判」感想

シカゴ7裁判、みた。ベトナム戦争下のアメリカを舞台に、理不尽な裁判を戦う反戦活動家を描いた実録モノ。この手の映画を撮らせたらA・ソーキンの右に出る者はいないな…。有罪ありきで裁判を進める判事にいろんな人物の姿を重ねたくなる。7人の男たちが決し…

「アイヌモシリ」感想

アイヌモシリ、みた。現代のアイヌ民族の生き様を阿寒湖畔に暮らす少年の視点から描く。キャストは全員アイヌ。アイヌ語の独特ながら耳馴染みのいい響き、鉢の火が跳ね、鉋で木が削れる音、カムイの森に積もる雪も優しく輝く。この雄大な自然が、神様が、そ…

「スパイの妻 劇場版」感想

スパイの妻、みた。スパイ疑惑の夫と幼なじみの憲兵の間で揺れる妻を描くポリティカルスリラー。3人の思惑が複雑に絡みながら流転する展開は濱口竜介テイスト。高橋一生の品のある胡散臭さ、東出昌大の人外感はさすが黒沢清演出。広げた風呂敷に比べてミニマ…

「異端の鳥」感想

異端の鳥、みた。色分けされて群に放たれた鳥のように、ユダヤ人というラベリングによって除け者にされる少年。動物虐待、レイプ、監禁、殺人…普通の人々の醜さよ。一方で侵略してきた外国の軍隊は規律が取れているという皮肉。地獄のような光景なのに、モノ…

「星の子」感想

星の子、みた。あやしい宗教にのめり込む両親に育てられたちひろ。病弱だった自分がいま生きていることが信仰の証という残酷さ。芦田愛菜ってスクリーンを支配するスターではないが、一対一の距離感で感情のひだまで直接観客に届けてくれるような繊細さを持…

「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」感想

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ、みた。眠すぎて前半は意識が飛んでたが、サンフランシスコの街並み、日差し、時代に取り残されても力強く生きる人びとの顔が印象的な映画だった。一応物語の中心はジミーだけど、本当の意味での主人公は変わり…

「本気のしるし 劇場版」感想

本気のしるし 劇場版、大傑作!自覚なく他人を振り回す浮世と、破滅を予感しながら彼女にのめり込む辻。無私の愛でも、肉欲でもなければ、単なる火遊びでもない。常に不合理で、まわりにこんなに極端な人間いるか?と問われたら答えはもちろんNO。でも、この…

「河内山宗俊」感想

河内山宗俊、みた。甘酒屋のお浪を救うため男たちが立ち上がる!チャンバラの末に打ち解ける宗俊と市之丞の気持ちよさ、あれよあれよと転がるコミカルな物語はやがてそのまま悲劇的なラストへの加速していく。怒涛の後半の転調が素晴らしく、逃げ回る三人を…

「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」感想

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ、面白かった。羽田空港に出現したガイラの異物感、人を喰らい服だけ吐き捨てる気持ち悪さ、夜の丸の内の戦闘の緊張感など見どころたくさんあった。学者と自衛隊のタッグは「シン・ゴジラ」に繋がるのか。オチは作…

「おカネの切れ目は恋のはじまり」感想

おカネの切れ目が恋のはじまり、全話みた。彼がそこに居ることで却って現実の「不在」を、逆に劇中そこに居ないことで、彼がまだ「生きている」ことを気づかせてくれるドラマだった。三浦春馬と松岡茉優のチャーミングさがたっぷり詰まっている。できれば、…

「キューポラのある街」感想

キューポラのある街、みた。いまやベッドタウンの川口だが、当時は荒川を挟んで貧困世帯も住む工業地帯だった。そんな土地でもがく若者たちの物語。高度成長期の格差、朝鮮人差別などアクチュアルな問題も描かれ、当時の生々しい空気感を知る。吉永小百合が…

「映像研には手を出すな!」感想

映像観には手を出すな!面白かった。乃木坂三人の掛け合いはずっと見ていられる。ロボ研と映像研の掛け合いはアニメ版でもあったが、不器用で無邪気なオタクたちの交感に期せずしてホロリとさせられる。完ぺきだった伊藤沙莉版とは違う解釈で輝きを見せる齋…