映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「肉体の冠」感想

肉体の冠、観た。邦題が意味不明だが、原題の「Casque d'or」は娼婦の派手な髪型を指すらしい。因縁つけるロランやそれに応える主人公のマンダは気が短いし、裏で手を引くルカも薄情だ。気持ちの乗る映画ではなかったが、マンダの逃走から反逆への終盤は面白…

「柔らかい肌」感想

柔らかい肌、観た。不倫男の二重生活を描くサスペンス。ピエールを演じるジャン・ドサイの頼りない顔がすばらしい。お前どう考えてもウソは下手だし不倫できるほど図太くないだろ、っていう笑 扉の手前と向こう側、見る/見られるの関係…。真夜中にパリに向…

「これは君の闘争だ」感想

これは君の闘争だ、観た。激動の2010年代ブラジルで学生運動に身を投じた三人が当時を振り返るドキュメンタリー。教育を受ける、当然の権利のために子どもたちが闘わなければならない社会って、一体何なのだろうと泣きたくなってしまった。しかし、そこに確…

「モーリタニアン 黒塗りの記録」感想

モーリタニアン 黒塗りの記録、観た。グアンタナモ収容所の真実をめぐる攻防を描く。釈放を求める弁護士と、起訴を試みる軍人が、じつはアメリカ人として同じ正義を信じている。そして、反復されるミサとサラート。カトリックもムスリムも、最後は神=真実の…

「13th -憲法修正第13条-」感想

13th -憲法修正第13条-、観た。エヴァ・デュヴァーネイによるドキュメンタリー。奴隷制廃止以降、黒人差別が「合法化」され、やがて刑務所産業の衣をまとった「ビジネス」になっていく様が明かされる。差別はカネになるという身も蓋もない現実を突きつけられ…

「男はつらいよ 寅次郎すみれ歌」感想

男はつらいよ 寅次郎かもめ歌、観た。仲間の墓参りで出会った子が東京に…。父親代わりに奮闘する寅さんが新鮮だ。若い頃の伊藤蘭がメチャクチャ可愛い。黒木華とかミイヒの系統。娘に「しあわせになれよ」と背中を押す「しあわせになれない」寅さん。これが…

「エターナルズ」感想

エターナルズ、面白かった!紀元前から地球を護ってきたヒーローの物語。これまでのMCUヒーローのオリジンは「なぜ戦うのか?」を求める物語だったが、彼らは戦うために遣わされた神だ。戦いの人類史から立ち現れる再帰的な問いへの答えは極めてパーソナルだ…

「ほんとうのピノッキオ」感想

ほんとうのピノッキオ、観た。童話のキャラクターを実写にした違和感やグロテスクさを、そのまま美しく撮ろうとするセンス!美醜のスキマにいるピノッキオのデザインが良い。その佇まいは善悪の判別がつかず、ときにピュアな心で優しく人に接し、ときに欲に…

「いちどは行きたい女風呂」感想

いちどは行きたい女風呂、観た。一か八か賭けで手をつけたが、案の定ハマらず。ナンセンスな笑いの邦画はまあまあキツい。1970年当時は「太陽に愛されよう」でおなじみの小麦肌ブームだったせいか、風呂場の女性がみんな日焼けしている。ボーリング場でドラ…

「MONOS 猿と呼ばれ者たち」感想

MONOS 猿と呼ばれし者たち、観た。人質を預かるゲリラ軍の少年兵たちの聖域が徐々に崩壊していく…。少年少女のイノセンスとエネルギーが逃げ道のない暴力に迷い込んでいく過程は、W・ゴールディング「蠅の王」を思い出す(豚の頭出てくるし)。誰が主人公か…

「海辺のポーリーヌ」感想

海辺のポーリーヌ、観た。「人は他人の選択が許せないのね」となげくポーリーヌ。オトナたちはみんな自分勝手で、嫉妬深くて、都合の良いことばかり言う。等身大のポーリーヌが却っていちばん冷静でまともに見えてくるから面白い。言葉多き者は禍の元。ピエ…

「朝が来ますように」感想

朝が来ますように、観た。東京フィルメックスにて。結婚式に出席するため故郷のパレスチナに戻ってきたサミ。しかし、村がイスラエル兵に封鎖されてしまい…。これと言って刺さるモノがなかったかなあ。イスラエルに働きに出るパレスチナ人ってどういう地位な…

「見上げた空に何が見える?」感想

見上げた空に何が見える?、観た。東京フィルメックスにて。街中で一目惚れをした男女が、あくる朝、見た目が変わる呪いにかかってしまい…。ジョージア・クタイシの何気ない景色が、僕たちの日常を祝福してくれる。途中から話が脱線しまくるが、最後に待って…

「CUBE」感想

CUBE、観た。面白かった〜。ゴア描写は拍子抜けだが、謎解きスリラーとして大いに楽しんだ。仮説と検証を繰り返して徐々に全貌がわかってくる、絶妙な脚本さばきに唸る。情報の出し方の巧みさよ。そして、誰が死ぬか分からないから落ち着かない!人間は怠惰…

「かそけきサンカヨウ」感想

かそけきサンカヨウ、観た。お父さんの再婚に戸惑う娘の恋と成長…というありがちなテーマをこうもおいしく料理できるんだ!という驚き。味付けは最小限に、じりじりと心の距離を詰めていく人たちを丁寧に描く。カフェでのんびり過ごす昼下がりのような映画。…

「ひらいて」感想

ひらいて、観た。好きな人の好きな人に近づく少女の物語。良くも悪くも山田杏奈の「顔」に勝負を賭けた映画だ。目論見は成功しているが、それ以上にパンチのある映画だとは思えず…。他者とふれる「手」や境界線の淡さを現す「桜色」のモチーフは印象的。ただ…

「最後の決闘裁判」感想

最後の決闘裁判、観た。面白かった!「騎士の誉れ」のベールが一枚ずつ剥がされていく。お風呂に入らない貴族が香水でむりやり体重を消したみたいに、神の力や騎士の栄光とやらで、この野生的な世界の血生臭さは彩られている。だれもが「自分を正しい」と思…

「燃えよ剣」感想

燃えよ剣、観た。土方歳三の目線で語られる新撰組の物語。終盤の駆け足っぷりが気になるけど、二時間半という尺の制約を考えれば、よくまとまっていると思う。岡田准一の殺陣をたっぷり見られるし、池田屋事件や鳥羽伏見の戦いはお金かかってんな〜という迫…

「キャンディマン」感想

キャンディマン、観た。鏡の前でその名を五回呼ぶと男が殺しにやってくる…。地元に伝わる都市伝説をインスタレーションにした主人公は「彼」を甦らせてしまう。僕たちが「呪い」や「恐怖」で片付けてしまうものの先に、ホントは何かあるんじゃないかと思わせ…

「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」感想

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花、観た。ファン人気が根強いのも納得。寅さんの「結婚」という禁忌にたびたび踏み込むリリー編の中でも特に核心に迫っている作品だ。束の間のユートピアともいうべき沖縄での「夫婦」生活に泣く。根無草のふたりにしあわ…

「DUNE/砂の惑星」感想

DUNE/砂の惑星、観た。いやぁ〜、ことしの映画でもっとも鈍重な作品の一つであることは間違いない。背景説明を並べただけの前半、リズム感皆無の編集に眠気を誘われたけど、物語の輪郭がはっきりして、ティモシー・シャラメが気高きプリンスとして覚醒する後…

「サマータイムマシン・ハズ・ゴーン」感想

「サマータイムマシン・ハズ・ゴーン」を観ている。タイムリープで何度も運命の相手と出会う上白石萌歌の「リマインド」が良い。この子のコロコロ変わる表情、ずっと観てられるんだよな。姉の萌音がブレイクした「君の名は。」をすこし思い出した。 おぎやは…

「ビルド・ア・ガール」感想

ビルド・ア・ガール、観た。試写にて。作家を目指すジョアンナは辛口音楽ライターとして雑誌デビューを果たすが…。若さゆえの全能感。はやくコイツを止めてくれ!と叫びたくなる痛々しさにそんな時期もあったと笑えるほど俺は青春したかなと。現役高校生の感…

「由宇子の天秤」感想

由宇子の天秤、観た。いじめ事件を追うドキュメンタリー監督の由宇子は、私生活で信念をゆるがす「事件」に直面し…。並走するふたつの「事件」をさまざまな角度から照らしてなお観客を混乱させない脚本さばき!だれも「観察者」ではいられない。真実は存在し…

「TOVE トーベ」感想

TOVE トーベ、観た。「ムーミン」を生んだトーベ・ヤンソンの恋と創作を描く。彼女はじぶんが偉大な作家になることを知らない。はじめは画家を目指していたこと、親の抑圧や恋人への嫉妬に苦しみながらあの世界観をつくりあげたこと。すべて初めて知ったけど…

「美しき結婚」感想

美しき結婚、観た。「私、結婚する!」と宣言してから好きになる相手をさがすサビーヌ。いや〜、絶対友だちになりたくないな…と思いつつ、カーキ色のクラシックカーを乗り回し、猪突猛進で迷惑かけまくる彼女から目が離せない。胸かきむしりたくなる痛々しさ…

「護られなかった者たちへ」感想

護られなかった者たちへ、とりあえずの感想。最後の10分で上映止まっちゃったけど、ほぼ締めのお茶漬けモードだったので。震災と疑似家族の切り口は、導入からほぼそのまま「岬のマヨイガ」でびっくりしたが、こちらは生活保護がテーマ。自己責任社会の矛盾…

「ロゼッタ」感想

ロゼッタ、観た。アル中の母とトレーラーハウスに暮らす少女を描く。ダルデンヌ兄弟がパルム・ドールを勝ち取った作品。ガツガツと歩くロゼッタの背中を追う手持ちカメラの撮影がとにかくすばらしい。戦争映画か自然ドキュメンタリーのよう。ラストカットの…

「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」感想

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ、観た。英国の斜陽とジェームズ・ボンドというキャラクターの時代性に向き合ってきたシリーズ。なるほど、ダニエル・クレイグの花道としてこれ以上ない結論だ。スタイリッシュさとバカバカしさの行き来が絶妙で、やや長くても…

「イゴールの約束」感想

イゴールの約束、観た。「その手に触れるまで」のダルデンヌ兄弟。原点はここにあったのだと気づく。不法移民のアパートを仕切る強権的な父とその息子イゴール。最悪な環境で「善い選択」をするってすごく勇気が要る。ラストの沈黙は赦しなのか、それとも怒…